超訳【仏教説話】
ミラクル・フラッシュボーイ
2009.5.17
ある時、ブッダが弟子のアーナンダを連れてカビラ城の城下町を歩いていると、道端に人だかりがしているのが目に入りました。
ブッダ:「おいアーナンダ、なにごとか見てきなさい。」
アーナンダ:「はい、よろこんで!」
戻ってきたアーナンダはブッダに報告しました。
アーナンダ:「いや、驚きました。 あそこの空き地に赤ん坊が捨てられているんですがね、それはもう、チョー可愛いんですよ!
右手の指なんか吸っちゃって、おめめパッチリなんです。
で、まばたきもせずに往来する人々を見つめているんですよ。」
それを聞いたブッダは、つかつかと捨て子のところまで行き、まじまじと見つめると、こうつぶやきました。
ブッダ:「ああ… やはりオマエだったのか。
確かにあの時のオマエの態度は良くなかったのだが、いまだにこんなところで捨て子をやっているとはな…」
するとその時、驚くべきことにその赤ん坊が口を開くと、こう言ったではありませんか!
赤ん坊:「おお、ゴータマじゃないか。久し振り! あの時はすまなかったな。おかげでオレはいまだにこのザマよ…」
ブッダ:「あの時のことはもういいって!」
赤ん坊:「いや、そういうわけにもいかんだろう。
オレはあの時のことを深く反省して、もうこれ以上何も言うまい、何も考えるまい、と心に誓ったんだ。」
ブッダ:「バカ! そんなことをして何になる!?
間違ったことを言わないようにするのと、何も言わないのとは全然違う!
間違ったことを考えないようにするのと、何も考えないのとは全然違う!」
赤ん坊:「いや、そうは言ってもなぁ・・・
何かしようとするから失敗するのだろう?
だから、何もしないでいるのがベスト・ソリューションだと思ったんだけど…」
ブッダ:「だから、失敗しないようにするのと、何もしないのとは全然違うんだって!
なんでベストを尽くそうとしないかなぁ…」
赤ん坊:「いやいや、オレたちはかつて悟ったじゃないか。
『何も得るものはない、生まれることもない、法もない、仏もいない』って。」
ブッダ:「いや、それはオマエの心得違いだ!
得るとか得ないとかを超えたところに法がある!
生まれるとか生まれないとかを超えたところに仏がいる!
オレを見ろ!
現にオレはこの世界でこうやって仏をやっているぞ!」
赤ん坊:「ふっ… さすがだな。
オマエにはかなわないよ。」
そしてブッダが赤ん坊の手を握って引っぱり起こすと、なんと赤ん坊は立ち上がりました。
皆が驚愕して見守る中、ブッダは赤ん坊に命令しました。
「オマエがしてきたことは、決して悪いことばかりではなかったハズだ。
過去の過ちにとらわれるのは、もうやめろ!
さぁ、今こそ四千億年前の誓いを思い出せ!
我らは生きとし生けるもの全てのために生きようと誓ったのではなかったか!」
それを聞くやいなや、赤ん坊は垂直に百m以上飛び上がり、空中でまばゆい閃光を放ちました。
光は世界の隅々まで入り込み、全ての闇を消滅させ、生きとし生けるもの全てがそのおかげをこうむったのです。
赤ん坊はひとしきり光を放つと、八歳ぐらいのこどもの姿となって降下しはじめました。
その子が素っ裸なのを見て、天帝インドラは服を着せてあげようとしましたが、こども(以下、ミラクルフラッシュ・ボーイ)は「いやいや、カウシカ(インドラが人間だった時の名)さん、私にはもはやそんなものは必要ないのです。すでに「法」という名の服で全身を覆いつくしているのですから!」と言って辞退しました。
ブッダはヒラヒラと落ちてきたインドラの服を右手でキャッチし、着地したミラクルフラッシュ・ボーイに言いました。
「まぁ、そう言わないで、もらっておきなさい。」
ミラクルフラッシュ・ボーイは右ひざを地につけてひざまずき、右手で服を受け取ると、素直に着用しました。
一連の出来事に皆が度肝を抜かれて立ち尽くす中、ブッダは提案します。
「さてと、オマエの母親のところに行こうか。」
ブッダたち一行はぞろぞろとカビラの城下町を練り歩き、とある家の前まできました。
ミラクルフラッシュ・ボーイはためらうことなく扉を開き、中にいた女性に語りかけました。
「母さん、あなたは何も悪くない。
むしろ素晴らしいことをしたのです。
なにしろ、私というミラクルフラッシュ・ボーイをこの世界に出現させたのですから!」
ことの次第に感動したインドラは、素晴らしい香りのする天衣をこの女性にプレゼントしたのでした。
一行が借り住まいしていたジュータ林(祇園精舎)に戻って一服していると、コーサラ国の王がブッダを訪ねてやってきました。
ミラクルフラッシュ・ボーイ出現騒動を耳にして、多勢の兵士たちとともに事情聴取に来たのです。
王はミラクルフラッシュ・ボーイを見ると感嘆の声をあげました。
「こ、これは凄い! まさに全身が光り輝いているようだ!
・・・こんな素晴らしい才能を持った子が、なんでまた捨て子などという運命を背負ってしまったのだろうか?」
ブッダは答えました。
「ああ、それか。
今から四千億年ほど昔、この世で一番最初の仏であるビバシ仏の元に、二人の弟子がいた。
一人は、あまり欲のない性格で、ひとりでいるのが好きだった。
もう一人は、繁華街に出入りしたり流行を追ったりするのが大好きだった。
で、そのことについて片方が説教したところ、もう片方は気を悪くして、こう言って罵ったのだ。
「なんだと、こら!? オマエみたいな捨て子にそんなことを言われる筋合いはないね!」
それからというもの、彼は生まれ変わるたびに捨てられる運命となってしまったというわけだ。
しかし、あれからもう四千億年、その報いもついに終わる時がきた。
終わった今の彼を見てみろ。まばゆいばかりだろう?
彼は既に、六十四億人分の仏に匹敵する能力を持っているのだよ。」
恐れ入ってひれ伏す王を尻目に、ブッダはアーナンダに話しかけました。
「おい、アーナンダ、オマエ、こいつが地上百m以上に飛び上がったり、閃光を放ったりしたのを見たよな?」
アーナンダ:「はい、見ました! 私は確かにそれを見ましたとも! しかし、こんな奇跡のようなことがあるんですねぇ…」
ブッダ:「オマエ、この際だから今までの経緯を記録しておきなさい。」
アーナンダ:「はい、もうバッチリ記憶されていますよ!
ところで今回の事件にはいったいどのようなタイトルをつけましょうか?」
ブッダ:「そうだなぁ。
「不思議な光を放つ少年の物語」とでもしておこうか。」
アーナンダ:「合点、承知です!」
出典:不思議光菩薩所説経

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