超訳【無門関】
第25話 オマエの番だ! 原題「三座説法(さんぞのせっぽう)」
ある日、仰山(ぎょうざん)和尚は次のような夢を見ました。
「はっと気がついたらさ、オレ、なんか昇天して兜率天(とそつてん)にいるわけよ。
うん、そう。
あのマイトレーヤ(弥勒菩薩)がいるところね。
で、座ろうと思ったんだけど、物凄い人だかりで、全然空席がないんだよ。
うわ! チョー人気じゃん。マイトレーヤ!
まさに大ブレイク中だね。
56億7千万年先とかいわないで、今すぐにでも俺らの世界におりてきてくんねぇかな。
とか思ってたらさ、すっげー前の方にひとつだけ空いてる席があったわけ。
最前列3番目の席(三座)ね。
なんか遅れてきたのに、そんないい席座っちゃっていいんスか? とか思ったけど、しょうがないからそこに腰を下ろしたわけよ。
そしたら、えらそーなオッサンが登場して、セミナーが始まったんだけど、いきなり言うことには、
「今日は、最前列3番目の席に座っている人が発表する番です。」
だって。
うわ、ありえねー!
とか思ったけど、しょうがないから立ち上がったさ。
で、大勢の注目を浴びながら、こう言ってやったわけ。
「えー、皆さん。
この私もハッピー、みんなもハッピーという最高にクールな理論はですね。
とてもじゃないけど、「言葉」とかそんなチープなもんじゃ、伝えることができないわけよ。
さぁみんな、聴くべし! 聴くべし!」ってね。
はい皆さん、このオッサンはいったいこの場をどうやって切り抜けたと思う?
そもそも、話したのか? 話さなかったのか?
ペラペラと話したところで、この「兜率天」劇場の、耳の肥えた皆さんにはとてもじゃないけど、ウケやしない。
かといって黙っていたのでは、それこそお話にならない。
おいおい、誰だい?
それなら、口を半開きにしたらどうか、とか言っているのは。

前のページへ
目次へ戻る
次のページへ
【維摩経】
【龍樹】
【風姿花伝】
BUNCHIN.COM